小金井歯科医師会

食べることの背景

【令和3年11月号】
小金井歯科医師会 / 黒田 百樹

私たちは食事をする所に属している、そこで安らぎ楽しみを見つける。食べることは生きて社会性を持つ上で最重要事項の一つです。食べる機能を回復させる歯科医師にとっては患者さんに人生100年時代に向けて準備と覚悟をしっかりと持っていただく事は大事な使命です。それは早すぎる事も遅すぎる事もありません。

生命維持に欠かせない物で体内に入る物は空気と食べ物(水を含む)であり、食べ物は口からのみ摂取される。口腔を通過したものがいん頭を経てこう頭蓋ずがいで空気と別れて無事にえん下されるまで実に5段階を経過する。その間全ての器官は無駄も余分もなくしかもシームレスに働く。

第一段階は食べる物を認知する、調理の仕方、形、量、温度などから食べるかを瞬時に判断する。時にため息をついてあきる事もある。食べると決まったら口を開ける角度、唾液分泌量を準備して第一段階を終了する。第二段階では口唇、口輪筋、頬、舌が連動して食物を取り込むのだがどこかに不具合があると、こぼす。

役割によって形の違う前歯と臼歯が粉砕するあごの関節はデリケートに動き、繊維のものから肉までも咀嚼そしゃくする、人間は雑食動物です。唾液と混じり食塊の大きさが決まると舌根から咽頭へ送り込まれ嚥下の準備は完了する。随意運動なので停止も可能、舌を強く口蓋に当てて鼻咽腔が閉鎖されると陰圧になり反射的に嚥下される。後戻りは難しい。この他に社会的背景も考えると食べる事の背景ほど多様なものはない。