小金井歯科医師会

歯医者と麻酔の始まり

【平成27年11月号】
東京都小金井歯科医師会 / 鹿島 雅彦

 歯の治療というと痛いイメージがある。
 痛い治療に対し何をするかといえば麻酔である。実は麻酔の始まりには歯医者が深くかかわっているのである。

 麻酔の起源をたどると紀元前まで遡ることになり、大麻やマンダラゲ(朝鮮アサガオ)などを用いていたようだ。 しかしその効果は不十分で、手術は拷問にも等しかった。
 近代的な麻酔となると、1844年にアメリカのWellsという歯医者によるものが世界初の症例と言われている。 笑気ガスという麻酔薬を使う全身麻酔による歯を抜く手術であった。
 一方、エーテルによる全身麻酔で、やはりアメリカの歯医者であるMortonは歯を抜く手術を行い評判になっていた。 1846年には下顎の腫瘍を取る公開手術を行い大成功となった。 この成功により麻酔は様々な医学的な手術に用いられるようになり、 現在のような麻酔法が確立していくこととなる。 ちなみにエーテルはその引火性により現在では使用されなくなった。

 ところで現在、歯医者でよく行われる注射の麻酔(局所麻酔)は WellsやMortonの全身麻酔に遅れること約40年、1885年に外科医のHalstedにより初めて行われた。 しかし対象はこの時も歯の治療であった。 当時の局所麻酔薬はコカインであったが、現在ではその中毒性から他の安全なものに置き換わっている。

 医学の中で麻酔の歴史は非常に浅いが、そのおかげで医学は急速に発展した。 とりわけ歯の治療などは、痛くなく快適に出来るようになったのである。