小金井歯科医師会

歯周病について

【平成14年11月5日号】
東京都小金井歯科医師会 / 藤本 芳弘

歯周病は、細菌感染による炎症性の疾患で、中高年者のほとんどが罹患しているといわれています。しかしながら、病気の初期の段階での自覚症状がほとんどないために、歯肉の腫れや痛みを伴った急性症状が生じて来院されるころには、思いのほか進行していることが少なくありません。

ロの中のプラーク(歯垢)は、約500種の細菌から構成され、そのなかに歯周病原因菌が存在しています。最初、プラークは歯肉付近の歯面や歯と歯肉の間の溝に付着し、繁殖していきます。プラークが成熟して、歯肉の縁が炎症で腫れるころになると、酸素を嫌う細菌が増殖して定着します。この嫌気性菌本体や、これらから放出される毒素が、歯と歯肉の付着を剥離して、いわゆる歯周ポケットといわれる病的な深い溝を形成し、歯根表面の汚染と歯肉内部のさらなる炎症を起こしていくのです。この炎症が長期間持続すると、細菌の毒素のみならず、身体の免疫細胞の作用も影響して、歯を支えている骨が吸収・崩壊していき歯周炎が形成されるのです。

また、プラークの付着・増殖を助長する要因として、歯列不正、不適切な噛み合わせ、適合が不良になった修復物や義歯、歯ぎしり、唾液分泌の減少や口腔内乾燥などがあります。

一方、細菌から体を防御する機構である免疫力の低下もリスクファクターとなります。糖尿病やリューマチなどの内科的疾患、薬剤の長期服用、喫煙、精神的ストレス、不規則な生活習慣などが挙げられます。総じて、私たちの日常の生活態度に歯周病にかかりやすくなる原因が潜んでいるということになります。すなわち、歯周病は生活習慣病なのです。

歯周病の診査として、歯周ポケットの測定、炎症程度評価、歯の動揺度の測定、Ⅹ線写真による骨の吸収状態の評価、プラークや歯石の付着程度の評価などを行い、加えて、前述した歯周炎を助長する局所的・全身的因子の有無を調べます。

治療は、現在付着している細菌や細菌産生物を除去し、病気の進行をくい止め、組織を健康な状態にし、再発するのを防止することにあります。

具体的には、歯ブラシによる適切なプラークコントロールを身につけてもらい、喫煙や不良な食生活などの改善を進めると同時に、スケーリングやルートプレーニングという方法でプラークや歯石、汚染された組織の除去を行います。場合によっては、不適合になった修復物の再修復、歯列矯正なども行います。

治りきらないところは、歯肉を切開して、深い場所に残っている病巣の除去を行います。最近では、潔く垂直的に破壊された骨欠損部に特殊なシートを覆ったり、エナメル器質タンパクを主成分とする薬を塗ることにより、その部分を再生させる方法が行われています。さらには、歯を喪失したところに自身の歯根や人工の歯根を移植することで、噛み合わせを回復する方法も取られてきています。 歯周病は、生活習慣病であるため、日常生活に左右されやすく、再発しやすい病気といえます。やっとの思いで獲得した健康な状態を長期に渡って維持するために、規則正しい生活習慣を守り、じようずにプラークコントロールしていくのは大変なことです。そのためにも、治療終了後も痛みや腫れの再発を目安にせず、定期的に診査を受け、歯科医やスタッフによる専門的なプラークコントロールを受けていただくことをお勧めします。