小金井歯科医師会

歯の検査記録を

【平成10年11月5日号】
東京都小金井歯科医師会 / 鹿島 俊彦

身元不明者、家出失踪者それに風水害、土石流などの自然災害や、火災、爆発、交通事故、航空機事故等で、毎年多数の犠牲者が出ています。

海外旅行や、国内旅行でも飛行機に乗る機会が増加し、航空機事故だけについて考えても、それがいつ、どこで発生するのか全く予測できない。古い話になるが昭和60年8月、羽田を飛び立った日本航空のジャンボジェット機が、群馬県多野郡上野村の御巣鷹山に激突し、墜落炎上し、墜落後の機体の破片は、一キロ四方に飛散して惨状を極め、乗員乗客524名中、520名が死亡し、奇跡的に4名の生存者が確認され、その救出作業のテレビ報道は全国民の関心を呼んだ。

航空機事故の犠牲者の状態は悲惨を極め、人体の損壊が著しいことが多く、身元確認に困難を来す。

身元確認方法は、死体の外観(顔面、頭髪、身体特徴)、所持品、着衣、指紋、歯の所見等がある。

歯は人体組織中で最も硬く、死後でも物理化学的変化が少なく、最後まで原形のまま残る可能性が大きい。しかも高い精度で個人的特徴を示すため、正確な歯の検査記録であるカルテ(診療内容を記録したもの)やレントゲン写真などを保存しておけば、有事の場合において、必ず大いに役立つはずです。

日航機墜落事故では、「身元確認31%が歯型」というタイトルで左記のように報道された。

「収容した遺体は、完全遺体が492体、事故のショックでバラバラとなった部分遺体1070体の身元を確認、遺族に引き渡した。遺体確認の大きな決め手は、31%が歯型。この他顔や体の特徴23%、指紋19%、所持品17%、着衣10%などとなっている」。

この場合の歯型というのは、歯科的所見という意味で、生前の歯のカルテと遺体の肉眼的所見との比較や、生前のレントゲン写真と遺体を撮影したレントゲン写真とを比較する方法などを含んでいます。

犠牲者の損傷状態がとくにひどく、外見から確認できた遺体は極くわずかであり、ほとんどは頭部や顔面部、四肢が欠損していたり、焼けて炭化しているという悲惨さで、通常の識別方法では確認はできない状態であったが、歯については、顎(あご)が何か所かで骨折していても遺体とともに収容されたり、歯のついた顎の断片だけでも回収されれば、乗員乗客名簿によって収集された生前記録の歯のカルテやレントゲン写真との比較照合する事ができるのです。

その結果、約200体以上の遺体が、歯による識別法が利用されて確認に至ったわけで、外見所見より確認された人を除いた遺体数からみれば、約45%に相当することになります。

この様な事故はあってはならないが、万が一発生し不幸にも犠牲者になったとき、歯の検査記録を作って保管しておき、活用するよう配慮したいものです。