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歯の健康メモ
歯周病と喫煙について
【平成16年11月01日号】
東京都小金井歯科医師会 / 藤井 万弘

近年、歯周病は、細菌感染による慢性の炎症性疾患という概念に加えて、生活習慣病ともいわれています。歯周病になると、歯と歯肉の間の歯肉溝に歯周ポケットと呼ばれる病的なポケットが形成されます。通常の炎症では、免疫系で治癒されますが、歯周ポケットは、口の中では、最も湿潤した部位であり、さらに目視することができないため、プラーク(歯こう)などの汚染物質が堆(たい)積しやすく、炎症をさらに激化させてしまいます。その結果、付着歯肉部の喪失、歯槽骨の吸収といった、歯周病の病態が引き起こされるのです。

歯周病には、バイオフィルムと呼ばれる細菌からなるプラークが関与しますが、歯周病の原因としてはさまざまな危険因子が存在します。全身的因子として、喫煙、ストレス、食生活の影響、遺伝的疾患、糖尿病などの内科疾患、薬剤による副作用、ホルモンの分泌異常、加齢などが影響し、局所的因子としては、咬合関係、歯列不正や咬合習癖、歯周組織の形態、口腔(くう)衛生状態などが関与します。これらのなかで、歯周病の最も重要な危険因子といわれているのが喫煙です。

加齢に伴う付着歯肉部の喪失や歯槽骨の吸収の増加は、生体の抵抗力の減弱も関与するため避けられませんが、喫煙は歯周組織の状態をどんどん悪化させてしまいます。喫煙により口の中は、喫煙者口蓋(がい)と呼ばれる白いコブ状の隆起が出現したり、舌には黄色い舌苔がつきやすく、唇や口角はカサカサして皮膚は黒ずんできます。歯肉も黒く着色する傾向がみられ、歯には発癌(がん)物質であるタールの沈着がみられるようになります。そのほか、口臭もきつくなってきます。

また、たばこに含まれるニコチンは、血管を収縮させるため、本来なら歯周病の検査で出血が確認されるような症状でも、見過ごされてしまう危険性もあります。さらに、ニコチンは歯根面を覆っているセメント質とよく結合する性質があり、歯周治療処置を施してもすぐにセメント質が結合してしまい、治療効果が得られにくいこともあります。

加えて、たばこの煙の成分は、免疫細胞の能力を低下させる作用を持つことなどから、喫煙は歯周病をさらに進行させる危険性があるのです。

喫煙は、歯の喪失を早めたり、骨粗しょう症を促進するともいわれていて、そのほか、発癌の危険性を増加させ、呼吸器系、心血管系、内科系の疾患も誘発させます。当然これらの疾患は、歯周病の危険因子となる可能性が高いので、喫煙により歯周病を悪化させるという悪循環が生じてくるのです。また、喫煙は、喫煙者だけの問題ではなく、喫煙者の副流煙により、周りの人々にもタバコの害は蔓延(まんえん)します。健康的な生活習慣を送るためにも、歯、歯周組織の健康は欠かせません。あらためてもう一度、歯周病と喫煙について考えてみてはいかがでしょうか。