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歯の健康メモ
人工臓器としての入れ歯
【平成16年05月01日号】
東京都小金井歯科医師会 / 岩崎 宏

生き物は、生きてゆくためのエネルギーの大部分を、ロから取り込みます。このエネルギー源を効率良く体に取り入れるためには、こまかく砕き、消化液である唾液と混ぜ合わせることが必要です。ですから、これらを実行するための道具として、また重要な臓器としての歯は、とても大切にされなければなりません。

しかし、昔から、事故や虫歯・歯周病または加齢などによって、大切な歯を失うことは避けられませんでした。

古くは古代ローマ時代の遺跡などから、当時の人が使っていたと思われる人工の義歯が見付かります。ただし、現在のような洗練されたものではなく、動物の骨や歯を加工して糸や針金で他の歯に固定するような簡単なものでした。ですから、どちらかというと無くした歯の機能より見た目の回復が主な目的だったようです。その後、工作技術の発達や工業材料の開発などによりさまざまな試みがなされました。日本においては、江戸時代に樫(かし)などの堅い木と鯨の骨を使った、「木彫義歯」が作られました。アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンは、ゴムの義歯にスプリングを取り付けた、機能性を備えたものを使っていました。

現在では、プラスチック等の合成樹脂の発達によって、加工技術と精度が向上しており、機能とあわせて容ばうの回復にも大きく貢献できる義歯が開発されています。また、かみ合わせを正常にすることにより、難聴等の予防も期待することができます。

昔は歯を失うことによってあきらめられていた生活上のさまざまな不便を、現在はある程度まで克服することができるようになりました。失ったものは仕方ないとして、これからは積極的に義歯を活用し、菜しい食生活と、正確な発音によるコミュニケーションを大切にしていただきたいと思います。

入れ歯を入れる事に、多少なりとも抵抗を感じる方もおられる事でしょう。当然最初は異物感が強く、発音もままなりませんし、食べ物の味が変わったと思われるかもしれません。口の中の感覚は大変に敏感で、体を守るために小さな異物でも感じられるようにできています。義歯を体に受け入れるためには、相当な努力をしていただかなければなりませんし、慣れるための時間が必要となります。しかし、考えてみてください、失った臓器を取り戻す大きな価値を。

さらに、異物感を減らすために、義歯が舌と触れる部分を特殊な金属で薄く作る等、目的に合わせたものも選べるようになっています。ぜひ、かかりつけ歯科医にご相談ください。